人生で起こりえる事象のすべてを、自身の思考で整理することは、恐らく不可能でしょう。他人の言葉を己の思考の出発点、或いは糧とすることは、思考を先へ進めるために非常に有効であると考えます。また、そうした言葉は私を構成する一部となっています。このページでは、私自身のノートを兼ねて五十音順にまとめていきます。
※昔ノートに書き留めた際、版元を記入していなかったため、出典が不明のものもあります。予めご了承ください。
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アイデンティティ
アイデンティティという言葉には、〈職業〉という社会構造上の属性はもちろん、〈正直〉というような人柄を表す属性も同時に含まれている
アーヴィング・ゴッフマン『スティグマの社会学』 せりか書房 2001年改訂版 P14
アプリオリ
〈先験性(ア・プリオリ)〉とは、決して言われないことも、現実的に経験に与えられないことも、ありうるような心理の先験性ではなく、与えられた一つの歴史である
ミシェル・フーコー『知の考古学』 河出書房新社 1996年改訳版 P196
意識
意識はそれ自身も流動する数限りない心象が映っている流動する鏡である
ジョルジュ・プーレ『人間的時間の研究』 筑摩書房 1969年
逸脱
逸脱とは、他の何にもまして、ある人間の行為に対する他者による反応の結果である
ハワード S ベッカー『アウトサイダーズ』 現代人分社 2019年POD版 P228
逸脱とは単にある人間の行為だけではなく、その人間の外貌、あるいは存在自体にさえ、もしそこに象徴体系の境界を侵犯する徴表が識別させるならば、その人間にたいして付与される性質なのである
ハワード S ベッカー『アウトサイダーズ』 現代人分社 2019年POD版 P8
イデオロギー
イデオロギーとは、利害関係に染まってはいるが、それなりに正当な根拠をもった幻想である
ピエール・ブルデュー『ディスタンクシオンⅠ』 藤原書店 2020年(普及版) P132
命がけ
命がけとは自分を安売りしないこと
谷川雁『原点が存在する』 弘文堂 1958年
因果関係
因果関係は、本質的に知覚を通しては推定できない。因果関係の推定はあくまで理論に基づくのである。それゆえ、絶えず補足して考え、事実を仮定し、信じることが必要となる
ウルリッヒ・ベック『危険社会』 法政大学出版局 1998年 P37
飢え
われわれにとって、飢えとは、ただ飢えであることは決してない。飢えは記憶、悩ましい喪失の未来である。それは、飢えとはひとつの実存であり、何よりもわれわれの物質的な存在の事実にかかわるものだというもう一面の絶対の極を含んで、われわれの飢えについての真実なのだ
黒田喜夫『燃えるキリン 黒田喜夫詩文撰』 共和国 2015年 P259
運命
運命とはある存在がつくり出した虚構である
アラン『定義集』 岩波書店 2003年 P64
エゴイズム
エゴイズムとは、感覚における遠近法の法則である。最も近くにあるものが大きく重要に見え、遠方になるに従って、物事から大きさと重要さが減っていくという法則である。
フリードリヒ・ニーチェ『喜ばしき知恵』 河出書房新社 2012年 P243
オートマティズム
オートマティズムは――結論的にいえば、芸術創造の原理であることにおいて、人間存在の根本条件にふれて、われわれの心底にあるものをすべて表している
瀬木真一『創造の美学』 合同出版 1965年 P66
絵画
絵画はしょせん光の言葉にほかならない
アポリネール『アポリネール詩集』 新潮社 1954年
階級
階級は歴史的な不平等の一形態にすぎず、国民国家はその歴史的な枠組みにすぎない
ジグムント・バウマン『コラテラル・ダメージ』 青土社 2011年 P39
神
神なんて
苦悩の度合いをはかる
観念にすぎない
ジョン・レノン『God』
感情
感情は事実である
F・P・バイステック『ケースワークの原則』 誠信書房 2006年 P69
観念
《観念》はわたしにとって変形の手段である――したがって、何らかの変化の部分ないし瞬間である。
人間の個別の《観念》は、《それぞれある疑問を変形する手段である》
ポール・ヴァレリー『ムッシュー・テスト』 岩波書店 2004年 P149
危険
危険は、人間が歴史的に獲得した能力から発生するのである。つまり、地上の生命体の再生産の基盤を人間が勝手に変えたり、つくり上げたり、破壊することができるようになったことから発生するのである。言い換えれば、危険の根源は無知にあるのではなく知識にある
ウルリッヒ・ベック『危険社会』 法政大学出版局 1998年 P376
危険というものは、わたしたちの意識とは独立して「それ自体」として存在するようなものではまったくないのです。危険というものは、むしろ一般的な意識化によって初めて政治的なものになり、科学的な議論のための資料によって戦略的に規定されたり、隠されたり、演出されたりする社会的な構築物なのです
ウルリッヒ・ベック『世界リスク社会論』 筑摩書房 2010年 P79
奇跡
奇跡とは、物質主義者の考える物質主義的脱出法にほかならない
グレゴリー・ベイトソン『精神と自然』 思索社 1982年
教育
あらゆる教育は、まさに自由と称されるものに帰着する
ノヴァーリス『青い花』 岩波書店 1989年
狂気
狂気は人間の条件の一つです。私たちのなかには狂気が存在しています。理性が存在するのと同じように、狂気も存在しています。文明社会というためには、社会が理性と同じく狂気も受け容れなければならないのです。
フランコ・バザーリア『バザーリア講演録 自由こそ治療だ!』 岩波書店 2017年 P54
空間
空間は時間を凝縮している。それが空間の役目なのだ
ガストン・バシュラール『空間の詩学』 思潮社 1969年 P43
芸術
芸術はすべて識別であり選択である
ヘンリー・ジェイムズ『The Novels and Tales of Henry James(序文)』
劇場
劇場とは、施設や建物のことではなく、劇的出会いが生成されるための「場」のイデオロギーのことである
寺山修司『迷路と死海』 白水社 1993年 P118
欠乏
欠乏は、それを防止する対策をとらないために生じる、起こさなくても良い不面目なのである
ウィリアム・ベヴァリッジ『ベヴァリッジ報告』 法律文化社 2014年 P260
現在
現在とは二つの永遠に続く連続の間のたんなる一点であり、現在だけという研究対象などありはしない
S・ウェッブ B・ウェッブ『社会調査の方法』 東京大学出版会 1982年 P99
倦怠
苦痛なく苦しみ、意思なく欲し、論理なしに思考すること……それは否定の悪魔にとりつかれ、存在しないものに呪縛されること
フェルナンド・ペソア『不断の書、断章』 平凡社 2013年 P237
行為
行為とは、その目的が明瞭に意識せられている動作の謂である
西田幾多郎『善の研究』 講談社 2006年 P239
幸福
幸福な人間とは、客観的に生きる人である、自由な愛情と広やかな興味をもてる人である、これらの興味や愛情を通して、さらにまた、次にはその代りに彼自身を他の多くの人々にとって愛情と興味の対象にさせるという事実を通して、その幸福を確保するところの人である
バートランド・ラッセル『幸福論』(新版)KADOKAWA 2017年 P329
心
人間の心というものは――とくに感情がからんでくると――期待しているものを発見し、期待していないものに盲目であることに、きわめてたけている
S・ウェッブ B・ウェッブ『社会調査の方法』 東京大学出版会 1982年 P59
個性
個性は、自分の選択によるのではなく、達成によって生じる善である
フランカ・オンザロ・バザーリア『現実のユートピア』 みすず書房 2019年 P6
国家
国家の最低限の義務は、住民が安全に暮らせるようにすることだ
松本仁一『国家を食べる』 新潮社 2019年 P44
コミュニケーション
コミュニケーションは、文化の創造や維持の源であり、かつ担い手であるような行為課程なのである
タルコット・パーソンズ『文化システム論』 ミネルヴァ書房 1991年 P60
作家
作家というものはある意味で第三の性であるといえる。女性だから男性は書けない、女性しか書けないというのは、真の作家ではない
ナディン・ゴーディマ『アフリカは誰のものか』 岩波書店 1993年
差別
「偏見」とは、ある集団や個人に対するかたよった見方です。「差別」とは、偏見に従ってある集団や個人を不利に扱うことです
野中猛『心の病 回復への道』 岩波書店 2012年 P194
詩
小説は人と人の織りなす業の世界を描き、人の性と性が衝突すれば詩が生まれる
水上勉『わが文学 わが作法』 中央公論社 1982年
一ばん大切なことは詩という概念など存在せず、詩とは在るものではなく、成るものだということである
寺山修司『黄金時代』 河出書房新社 1993年 P89
人に真に共感を誘う詩は実は生きている人間であれば誰しも持ち合わせている天性が発揮されなければ出現しない
今泉準一『元禄俳人宝井其角』 桜楓社 1969年 P350
詩は、あらゆる人間的成分の結晶、あらゆる社会的要素の凝結――もっとも、それは単純なものであるが――を創りだす坩堝の底に生きるものである。詩は方法論をもたないひとつの力、本原的で論理をこえた摂理の底知れない深みからあふれでて、事物に意味を与える力である
トリスタン・ツァラ『トリスタン・ツァラの仕事Ⅰ 批評』 思潮社 1988年 P154
時間
時間は神の創造した宇宙の性質にすぎない
スティーブン・W・ホーキング『ホーキング、宇宙を語る』 早川書房 1994年
思考
思考とはまず、全体のうちに自己を定位して全体の部分となること、他の諸部分との関係をつうじて自己を定義し、位置づけることでなければならない。思考とは、個人と彼が係わる他の諸部分との差異をつうじて、個人がその自同性を保持することなのだ
エマニュエル・レヴィナス『レヴィナス・コレクション』 筑摩書房 1999年 P392
詩人
詩人とは、詩の自由と、それを自由の仮象と視る意識の矛盾する構造を呪われたように自己の内に抱き、現実の政治・社会革命が被支配者の自己権力獲得から権力の消滅までの永久的な革命とならざるを得ないように、その矛盾の構造を限りなく〈人間〉〈全体〉へ止揚しようとする内なる永久革命をつづける者であり、われわれの現存在の二重性、分裂の証人、それとの根源的な闘争者である
黒田喜夫『負性と奪回』 三一書房 1972年
詩人は世界の非公認の立法者である
パーシー・ビッシュ・シェリー『詩の擁護』(シェリー詩集) 新潮社 2007年改版 P303
自然
自然はつねに平らかな落ち着きをもって、人の不幸を目の当たりにし、人の卑しさを寛恕し、人からの責め苦を受けいれるだけだ
ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』 新潮社 2024年 P244
思想
思想とは人間の生き方であり、生きる態度である
高島善哉『時代に挑む社会科学』 岩波書店 1986年 P121
思想の根底は石畳の十字路である
ポール・ヴァレリー『ムッシュー・テスト』 岩波書店 2004年 P143
思想は、われわれの感覚の影である。――それはいつでも感覚より、暗く空しく単純である
フリードリヒ・ニーチェ『喜ばしき知恵』 河出書房新社 2012年 P250
実在
実在はただ直感によってのみ知られることができる。直感は知的同感であり、これによって我々は物の独特で概念的に表現し能わぬものと直接に合一せんがために、その物の内部に身を運び込み、かくて内からそれを捉え得る
三木清『現代の浪漫主義について』(中央公論 1935年6月号)
支配
支配には二種類がある。一つは、支配欲につき動かされた支配だ。もう一つは、誰からも支配されたくないために行う支配だ
フリードリヒ・ニーチェ『ニーチェ全集7 曙光』 筑摩書房 1993年
自発性
自発性とは、人間のよき性向もあしき性向も、すべて自由に満足させることを許すような無政府状態のうちにあるのではない。それぞれの社会的価値が、これとは無縁なものによって過大に評価されることも過少に評価されることもなく、まさに正当に評価されるような、そういう精妙な組織のうちにこそある
エミール・デュルケム『社会分業論』 筑摩書房 2017年 P608
資本
資本は死せる労働である。それは吸血鬼のごとく生きた労働を搾取することによってのみ生きる。そして資本が生きれば生きるほど資本はそれだけ労働を搾取する
カール・マルクス『資本論』
自由
自由とは、自分が「自由である」と信ずるところの、一つの幻覚にすぎない
萩原朔太郎『虚妄の正義』 講談社 1994年
宗教
宗教とは、あらゆるものを創造したとされる最高存在あるいは力とむすびつこうとする、人間の企てである
スティーブ・ビコ『俺は書きたいことを書く』 現代企画室 1988年 P107
趣味
趣味(すなわち顕在化した選好)とは、避けることのできないひとつの差異の実際上の肯定である。趣味が自分を正当化しなければならないときに、まったくネガティヴなしかたで、つまり他のさまざまな趣味にたいして拒否をつきつけるというかたちで自らを肯定するのは、偶然ではない。趣味に関しては、他のいかなる場合にもまして、あらゆる規定はすなわち否定である。そして趣味とはおそらく、何よりもまず嫌悪なのだ
ピエール・ブルデュー『ディスタンクシオンⅠ』 藤原書店 2020年(普及版) P101
人格
人格が才能の主人で、才能は人格の召使である
洪自誠『菜根譚』 岩波書店 1975年 P156
人権
人権の概念は、それを侵害された人の市民権がある国の法律を超越していますから、救いの手は誰からでも差しのべることができます。権利が脅かされている人と同じ国の市民権が、救い手にあろうとなかろうとかまわないのです
アマルティア・セン『貧困の克服』 集英社 2002年 P97
人種
人種――あるいは一般に理解されている意味の人種――は文化の作用にすぎない
クロード・レヴィ=ストロース『人種と歴史 人種と文化』 みすず書房 2019年 P123
人生
人生は幻化に似たり、終に当に空無に帰すべし
陶淵明『全詩文集』 筑摩書房 2022年 P106
進歩
「進歩」はイデオロギー以上のものである。つまり、進歩とは「正常」なものとして制度化された議会外の行動構造であり、社会を決定的に変えようとするものである
ウルリッヒ・ベック『危険社会』 法政大学出版局 1998年 P404
真理
真理とはもっとも根源的な意味で解されるなら、現存在の根本体制にぞくするものである。真理という名称は一箇の実存カテゴリーを意味している
マルティン・ハイデッガー『存在と時間(二)』 岩波書店 2013年 P522
真理は考えられた判断であって、単に考えられたに過ぎない判断と真理との識別の根拠は現実感覚による以外になく、この点で現実と交錯するが、考えられた判断という点で現実と異なる
今泉準一『元禄俳人宝井其角』 桜楓社 1969年 P250
心理学
心理学は行為である――自己を対象とする省察ではない
アルベール・カミュ『カミュの手帳[全]』 新潮社 1992年 P35
神話
神話とは、正しいと証明されたからではなく、それを認めると便利だからということで認められる説明である
デヴィッド・リンドリー『物理学の果て』 青土社 1994年
人間には、生まれつき神話を生みだす力がある。数奇な運命をたどった者の人生に驚くべき不思議な出来事を探し出して神話を作り、それを頭から信じこむ。神話は、平凡な人生に対するロマンチックな抵抗なのだ
サマセット・モーム『月と六ペンス』 新潮社 2014年 P8
睡眠
睡眠は死から借りた行為である。睡眠は生命を維持するために、死から借りるものである
アルトゥール・ショーペンハウアー『意志と表象としての世界』 中央公論社 2004年
スティグマ
スティグマとは、スティグマのある者と常人の二つの集合に区別することができるような具体的な一組の人間を意味するものではなく、広く行われている二つの役割による社会過程を意味しているということ、あらゆる人が双方の役割をとって、少なくとも人生のいずれかの出会いにおいて、いずれかの局面において、この過程に参加しているということ、である
アーヴィング・ゴッフマン『スティグマの社会学』 せりか書房 2001年改訂版 P231
最もスティグマの減少に有効な方法は、社会への統合である
チャールズ・A・ラップ/リチャード・J・ゴスチャ『ストレングスモデル』 金剛出版 2014年 P358
スピリチュアリティ
スピリチュアリティは、その人に希望、心の慰労、人生の意義や目的を与える信念あるいは実践、またはより大きな世界につながりをもつことを言う
チャールズ・A・ラップ/リチャード・J・ゴスチャ『ストレングスモデル』 金剛出版 2014年 P384
生産
生産とは、まず人間の生産であり、衣食住のための物的生産であり、つぎに社会的生産であり、最後に文化的生産である。これをひっくるめて言えば、新しい歴史の生産である
高島善哉『社会科学の再建』 新評論 1981年 P209
誠実
誠実は美徳ではなく、情熱である。それゆえそれは決して寛大ではない
アルベール・カミュ『カミュの手帳[全]』 新潮社 1992年 P423
精神病
精神病とは、この病が発症している様々な社会的背景に根ざした狂気の表現方法である
フランコ・バザーリア『バザーリア講演録 自由こそ治療だ!』 岩波書店 2017年 P213
生成文法
人間言語の生成文法は高度に制限された種類の基底規則の体系と、基底規則に準拠して形成された深層構造を表層構造へ写像する文法変形の集合と、普遍的音声アルファベットで表層構造に音声解釈を付与する音型規則の集合とを含んでいる
ノーム・チョムスキー『言語と精神』 河出書房新社 1996年改訂版 P259
善
人格の実現というのが我々にとりて絶対的善である
西田幾多郎『善の研究』 講談社 2006年 P346
禅
禅とは、現生から出発して、諸法の実相たることを確信するにある。それによって迷いを去り、仏を見、自己をその仏にしようとする一派である
水上勉『水上勉仏教文集 第一巻「白隠」』 筑摩書房 1982年
善悪
善悪は人に生まれついた天性、
苦楽は各自に与えられた天命
オマル・ハイヤーム『ルバイヤート』 岩波書店 1979年改版 P35
人の心、元より善悪なし。
善悪、縁によっておこる
道元『正法眼蔵随聞記』
潜在能力
潜在能力は実質的な自由を反映したものであると言える。機能が個人の構成要素である限り、潜在能力は個人の福祉を達成しようとする自由を表している
アマルティア・セン『不平等の再検討』 岩波書店 2018年 P80
戦争
文化は没落しかかっています。戦争がこのような事態を生み出したのではありません。戦争それ自体は、ただ、その一つの現れにしかすぎません
アルベルト・シュヴァイツァー『文化の没落と再建』世界思想教養全集21 河出書房新社 1963年 P27
戦争はすべてを失うことを、本来の自分とは違った人間になることを教える。すべては好みの問題となってしまう
アルベール・カミュ『カミュの手帳[全]』 新潮社 1992年 P113
戦争は人間の殺し合いであり、生存を否定しあうことなのだから、民主主義に反するものである。また戦争は、一部の「死の商人」(戦争を利用して的にも味方にも兵器や物資を売って儲けるもの)を除いては、国民の暮らしや健康を損なうものである。したがって社会保障に反する状況をつくり出すものである
真田是『社会保障と社会改革』 かもがわ出版 2005年 P41
創造
創造とは平和としあわせの堆肥となること
谷川雁『原点が存在する』 弘文堂 1958年
ソーシャル・ケースワーク
ソーシヤル・ケースワークは、さまざまな心理・社会的問題をもつ人びとを援助する一つの技法である。その援助技法には調査、診断、また治療の諸課程が含まれる。
F・P・バイステック『ケースワークの原則』 誠信書房 2006年 P211
退屈
退屈は絶えざる一つの警告なのである。何が退屈を生み出すのであろうか。それは活動しないということである。しかし、行動はわれわれが退屈から逃れるためにそこにあるのではなくて、われわれが活動しないことから逃れ人生の意味を正しく認めるように、退屈がそこにある
ヴィクトール・E・フランクル『死と愛』 みすず書房 2019年 P118
退行
退行とは、圧力をうけたシステムが、以前の発展段階において支配的かつ適切だったパターンに戻るという意味である
タルコット・パーソンズ『宗教の社会学』 勁草書房 2002年 P157
祟り
祝福やたたりについての観念は、人間が知りえた繁栄や災難の大きな実例についての事後からの説明である
ウィリアム・グラハム・サムナー『フォークウェイズ』 青木書店 1975年 P17
旅
旅には性格があり、気性があり、個性があり、独自性がある。旅は、それ自体が人間であり、おなじものは二つとない。どんなにプランをたてても、どんなに安全に気を配っても、どんなに警戒しても、どんなに抑えこんでも、意味がない。何年も奮闘するとだれもが知るようになることだが、われわれが旅をするのではなく、旅がわれわれを引っぱっていく
ジョン・スタインベック『チャーリーとの旅』 岩波書店 2024年 P14
地域福祉
新しい福祉は、福祉ニードに対して、あらゆる資源を動員して対応する理念に立っている。それを地域社会を基盤に実現しようとするところに、地域福祉の意義がある
阿部志郎『福祉の哲学』 誠信書房 2008年 P100
知覚
知るとは、接(まじわ)るなり
知覚するとは、(五感が対象を認識しようとして)外界の事物に交接する行為である
墨子『墨子』 講談社 1998年 P210
沈黙
沈黙とは、あらゆる思想のぎりぎりの表現、あらゆる努力のもっとも単純な形態である
イヴォ・アンドリッチ『サラエボの鐘(旧ユーゴ短編集)』 恒文社 1997年
罪
罪とは絶望である。その度の強まったものが、自己の罪について絶望する、という新しい罪である。これが罪の度の強まったものである
セーレン・キルケゴール『死にいたる病』 筑摩書房 1996年 P201
統合
統合とは、お互いの尊厳を認め合い、共通の基本的な価値と権利を認め合うという人と人との関係がベースになっている。もしそのような認識がなければ、疎外、隔離、排斥がおこるだろう
ベンクト・ニィリエ『ノーマライゼーションの原理[増補改訂版]』 現代書館 2000年 P102
道徳
道徳論は、我々はどうすれば自分を幸福にするかということについての教えではなくて、どうすれば幸福を受けるに値するようになるべきであるかということについての教えである
イマヌエル・カント『実践理性批判』 岩波書店 1979年
道徳の与へたる恩恵は時間と労力との節約である。道徳の与へたる損害は完全なる良心の麻痺である
芥川龍之介『侏儒の言葉』 岩波書店 1959年
徳
万物を生みだし、養い、生育しても所有はせず、恩沢を施しても見返りは求めず、成長させても支配はしない。これを奥深い徳という
老子『老子』 岩波書店 2008年 P45
日常性
「日常性」は生活の全体性・現実性の基盤としての一つの思想といえる
右田紀久恵『地域福祉総合化への道』 ミネルヴァ書房 1995年 P27
人間
人間は最近の発明にかかわるものであり、二世紀とたっていない一形象、われわれの知のたんなる折り目にすぎず、知がさらに新しい形態を見いだしさえすれば、早晩消えさるものだ
ミシェル・フーコー『言葉と物』 新潮社 1974年 P22
人間とは、世界へ、同類へ向かう運動そのものである。奴隷化あるいは制服を産み出す、攻撃性の運動である。また愛の運動、自己の贈与であり、論理的方向づけと呼ぶにふさわしいものの最終項でもある
フランツ・ファノン『黒い皮膚・白い仮面』 みすず書房 1998年 P64
ノーマライゼーション
ノーマライゼーションの原理は、知的障害やその他の障害をもつ全ての人が、彼らがいる地域社会や文化の中でごく普通の生活環境や生活方法にできる限り近い、もしくは全く同じ生活形態や毎日の生活状況を得られるように、権利を行使するということを意味している
ベンクト・ニィリエ『ノーマライゼーションの原理[増補改訂版]』 現代書館 2000年 P130
必要
必要は、物事が成立する理由とみなされる。実のところ、必要は、成立したものの結果にすぎないことがよくある
フリードリヒ・ニーチェ『喜ばしき知恵』 河出書房新社 2012年 P258
批判
批判というのは直下ではなくて、対立的に物事を考えることだ(中略)その対立をまとめなければ納得できないだろう
水上勉『泥の花』 河出書房新社 1999年
比喩
比喩は抽象的な概念を理解する基礎であるばかりか、「心の理論」に並行する形で、人間の知性の進化に不可欠なもの
フランク・ファランダ『恐怖と不安の心理学』 ニュートンプレス 2022年 P82
平等
真の平等に到達することを願うなら、実際問題として地球の北側でも南側でも、いたるところで蔓延している性差別や社会的差別、民族、人種に対する差別と闘うことができる指標や手続きを発展させることが急務である。しかし実際には、アイデンティティを硬直化させることなく、根強い偏見と闘うことそのものが、大きな困難のひとつなのだ
トマ・ピケティ『平等についての小さな歴史』 みすず書房 2024年 P151
貧困
貧困の意味するところは、不十分な住居、移動の制限、余暇・教育・人間関係・雇用の機会の制限である
チャールズ・A・ラップ/リチャード・J・ゴスチャ『ストレングスモデル』 金剛出版 2014年 P27
貧困とは、福祉水準が低いということではなく、経済的手段がふそくしているために福祉を追求する能力がないことである
アマルティア・セン『不平等の再検討』 岩波書店 2018年 P194
不安
不安は、自分の幸福に対する何らかの脅威が将来発生する可能性に対する早期警告システム
デビッド・A・クラーク、アーロン・T・ベック『不安・心配と上手につきあうためのワークブック』岩崎学術出版社 2024年 P46
内的異常状態の警報を表していて、身体体験の自発性が欠如する中で自分の体験と自己を受け入れられなくなった状態である。この不安は臨床上、懐疑とためらいによって曖昧で多義的な状態の中で明らかになる
フランカ・オンザロ・バザーリア『現実のユートピア』 みすず書房 2019年 P91
フォークウェイズ
フォークウェイズは、欲求を充足しようとする努力から起こってくる個人の習慣であり、社会の慣習である
ウィリアム・グラハム・サムナー『フォークウェイズ』 青木書店 1975年 P4
福祉
福祉は、平和のシンボルである。福祉を充実させることこそ、平和国家への道であると確信をもって主張したい
阿部志郎『福祉の哲学』 誠信書房 2008年 P154
不幸
すべての不幸はなんらかの種類の不統一、あるいは融合統一の欠如にもとづいている。そして、自分自身の内部におけるこのような不統一は意識的精神と無意識的精神との協力の欠如によるものである
バートランド・ラッセル『幸福論』(新版)KADOKAWA 2017年 P335
不条理
不条理の問題のすべては、価値判断と事実判断とに収斂されるものでなくてはならない
アルベール・カミュ『カミュの手帳[全]』 新潮社 1992年 P225
文化
文化とは本質的に、人生のさまざまな問題に対する、社会の複合的な解答である
スティーブ・ビコ『俺は書きたいことを書く』 現代企画室 1988年 P182
文明
文明は多かれ少なかれ高度に洗練されたもののなかにあるのではない。そうではなくて、それは一つの民族全体に共通する意識のなかにある。そしてその意識は決して洗練されてはいない。それは単純で真っ直ぐなものでさえある。文明を選良たちが作り上げたものとみなすことは、まったく別のものである文化と文明とを同一視することだ
アルベール・カミュ『カミュの手帳[全]』 新潮社 1992年 P33
平和
平和とは一切の敵意が終わること
カント『永遠平和のために』 岩波書店 1985年 P13
平和な国家は、その独立を守るだけの力を持っていなくてはならないが、その軍備によって国家が軍国主義化されてはならないし、その軍備を十分に規制することができなくてはならない。経済的に言えば、他国に支配されざるをえない国家も、他国を支配しなければならない国家も、ともに平和な国家ではない。そして国家の権力は制約されていなければならず、言論の自由の欠如、多数の専制、ある理念への狂信などは、国家権力の制約をいちじるしく困難にするものとしてしりぞけられなければならない
高坂正堯『国際政治』 中央公論社 2017年改版 P216
ボランタリズム
ボランタリズムは、社会福祉の実践を、問題によっては国家や自治体が直接行うより、自由で自主的な意思をもつ民間団体や住民が行うほうがよいと考える思想である。それは、無報酬で時間や労力を提供するボランティアの根源となる思想でもある
阿部志郎『福祉の哲学』 誠信書房 2008年 P97
民主主義
民主主義とは、組織の形態ではなく、毎日の生活習慣である
メアリー・E・リッチモンド『ソーシャル・ケースワークとは何か』中央法規出版 1901年 P155
民族中心主義(自文化中心主義:ethnocentrism)
民族中心主義というのは人々をして、かれらのフォークウェイズにおけるすべてのことを、それは特有のものであり、それが自らを他と異ならしめているのだ、と誇張し、強調する方向へと導くということである。それゆえ、民族中心主義というのはフォークウェイズを強化することになるのだ
ウィリアム・グラハム・サムナー『フォークウェイズ』 青木書店 1975年 P22
妄想
妄想とは、固定化された考えのことで、それらは現実と調和せず、文化的規範から逸脱し、理屈にあわない考えです
ジョエル・レビー『心理学の基礎講座』 ニュートンプレス 2022年 P215
モーレス
モーレスは、われわれがみんな無意識のうちに参加している社会的な儀礼である。労働時間、食事時間、家族生活、男女の社交、礼儀正しさ、娯楽、旅行、休日、教育、定期刊行物や図書悪寒を利用すること、その他無数にある生活のささいなこと、といった現今の習慣はこの儀礼の下にある
ウィリアム・グラハム・サムナー『フォークウェイズ』 青木書店 1975年 P80
憂鬱
憂鬱はひとえに褪めた情熱に由来する
アンドレ・ジッド『地の糧』新潮社 2023年(新版) P14
勇気
真の勇気というものは、極端な臆病と向こうみずの中間にいる
ミゲル・デ・セルバンテス『ドン・キホーテ』岩波書店 2001年
ラベリング
ラベリングは単なる命名やカテゴリー化ではなく、社会にとって正規の分類図式から拒否された「剰余」ともいうべき普遍的なカテゴリーに、人類を分類することなのである。これがラベリング過程の認識論的本質である
ハワード S ベッカー『アウトサイダーズ』 現代人分社 2019年POD版 P228
リカバリー
リカバリーとは、症状を体験し、スティグマとかトラウマに直面し、そしてその他のつまずきのまっただ中にあって、いかに人生を生きているかということである
チャールズ・A・ラップ/リチャード・J・ゴスチャ『ストレングスモデル』 金剛出版 2014年 P19
理性
理性とは、ある想念が他の想念にたいしてもつ関係を、それらがどのようにして生まれたかは別として、考察する精神である
パーシー・ビッシュ・シェリー『詩の擁護』(シェリー詩集) 新潮社 2007年改版 P248
理性とは、人間によって認識され、人間の生命の活動のよりどころとなるべき法則である
レフ・トルストイ『人生論』
良心
良心とは厳粛なる趣味である
芥川龍之介『侏儒の言葉』 岩波書店 1959年
歴史
歴史とは歴史家と事実との間の相互作用の不断の過程であり、現在と過去の間の尽きることを知らぬ対話である
E・H・カー『歴史とは何か』 岩波書店 1962年
笑い
あらゆる笑いは、差別と階級制を内包して生まれる
寺山修司『青蛾館』 文藝春秋 1975年