サービス等利用計画と個別支援計画とは、障害者総合支援法に基づいて作成される障害者の福祉サービスの必要性や内容についての計画である。これらの計画は、それぞれ異なる目的や特徴を持っており、その違いを理解することが重要である。そこで本稿では、両者の違いを明示し、両者とも関連性のある支給決定プロセスの意義と課題について述べる。
はじめに、サービス等利用計画と個別支援計画それぞれの特徴と関係性について説明する。
サービス等利用計画とは、障害者の生活に対する意向や総合的な援助の方針、解決すべき課題などを定めた計画である。障害者本人が作成することもできるが、多くの場合は指定特定相談支援事業者が作成する。指定特定相談支援事業者とは、障害者のサービス利用支援を行う専門的な相談員である。相談支援専門員は、障害者の心身の状況や置かれている環境、サービス利用の意向などを把握し、障害福祉サービスに加えて、保健医療サービスやその他の福祉サービス、地域住民の自発的活動なども計画に位置づけるよう努める。サービス等利用計画は、サービスの目的や期間、種類や内容、量などを記載するとともに、サービス提供の留意事項や支援目標、複数サービスの役割分担、利用者の環境調整など、総合的な支援計画となる。
一方、個別支援計画はサービス提供事業者が作成する計画である。サービス提供事業者とは、障害者が利用する生活介護や就労継続支援などの事業所である。サービス提供事業者において、障害者の個別支援計画の作成や実施、評価などを行う責任者がサービス管理責任者である。サービス管理責任者は、サービス等利用計画における総合的な援助方針などを踏まえ、事業所が提供するサービスの適切な支援内容や方法、目標や評価基準などを具体的に記載する。個別支援計画は、サービス事業所の専門性や特色を生かして、障害者のニーズを充足させるための計画となる。
サービス等利用計画と個別支援計画は、それぞれ異なる視点から障害者の支援を計画するものであるが、同時に連動しているものでもある。サービス等利用計画は、障害者の生活全体を考慮した上で、最も適切なサービスの組み合わせや支援方針を示すものであり、個別支援計画は、その方針に沿って、各サービス事業所がどのように支援していくかを示すものである。したがって、サービス等利用計画と個別支援計画は一貫性と整合性を持たせる必要がある。そのためには相談支援専門員とサービス管理責任者との連携が不可欠である。相談支援専門員とサービス管理責任者は、定期的に情報交換や意見交換を行い、障害者のニーズや状況の変化に応じて、計画の見直しや修正を行うことが求められる。
障害者総合支援法における支給決定プロセスとは、障害者が必要とする障害福祉サービスの種類や内容を、市町村が個別に判断する仕組みである。このプロセスの意義は、障害者の心身の状況や生活環境、サービスの利用意向などを総合的に勘案し、最適なサービスの組み合わせを提供することで、障害者の自立や社会参加を促進することにある。課題としては、支給決定の基準や手続きが複雑であること、市町村やサービス提供事業者の判断にばらつきがあること、障害者や家族のニーズや希望が十分に反映されないことなどが挙げられる。
これらの課題に対応するには、支給決定プロセスの透明化、相談支援専門員やサービス管理責任者の能力や責任の向上、サービス事業所の数や種類の充実、サービスの質や内容の均一化などの取り組みが必要であると考えられる。
最後に、根本的な課題として、相談支援専門員およびサービス提供事業者の不足を挙げておきたい。筆者は機会があれば相談支援従事者研修を受講するつもりである。少しでも貢献できるよう最善と全力を尽くしたい。
[参考文献]
・峯島厚、木全和巳、児嶋芳朗(編)『障害者福祉』弘文堂 2021年
・デイリー法学選書編修委員会(編)『障害者総合支援法のしくみ』三省堂 2019年
・厚生労働省. "障害福祉サービスの支給決定・サービス利用のプロセス" https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jiritsushienhou02/4.html.(2022年2月10日閲覧)
・金 廣來著. "日本における障害福祉サービスの利用抑制に関する研究". 佛教大学大学院 社会福祉学研究科篇 第42号. 2014年3月 https://archives.bukkyo-u.ac.jp/rp-contents/DF/0042/DF00420L035.pdf.(2024年2月26日閲覧)