2024年3月23日土曜日

障害者総合支援法の概略

 2022年、北海道江差町のグループホームで、知的障害のある入居者に対し不妊・避妊処置を求めていたことが問題になった。多様性やニーズにどう応えるかが今まさに問われている。また、障害者の人数は年々増加傾向にあり、障害者総合支援法が注目される機会も増した。そこで障害者総合支援法の概略と今日的な意義について以下述べる。

 障害者総合支援法は、障害のある人が日常生活や社会生活を営むために必要な支援を総合的に行うことを目的とした法律である。障害者自立支援法を改正する形で2013年に施行された。法律の対象者は身体障害者、知的障害者、発達障害者を含む精神障害者、障害児、難病患者の一部である。この法律で受けることができる障害福祉サービスは、自立支援給付と地域生活支援事業の2つが中心となる。
 自立支援給付には介護や就職のための訓練などがあり、以下のようなサービスがある。

①介護給付:居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所、療養介護、生活介護、施設入所支援など
②訓練等給付:自立訓練、就労移行支援、就労継続支援(A型、B型)、就労定着支援、自立生活援助、共同生活支援など
③相談支援:計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援など
④自立支援医療:更生・育成医療、精神通院医療など
⑤補装具費:義肢・装具・車いすなど

 一方、地域生活支援事業は、障害のある人が身近な地域で生活していくための支援事業で、市町村地域生活支援事業、都道府県地域生活支援事業があり、それぞれに必須事業と任意事業がある。
 市町村地域生活支援事業の必須事業には、理解促進研修・啓発事業、相談支援事業、成年後見制度利用支援、意思疎通支援、日常生活用具給付等事業、移動支援、地域活動支援センター機能強化事業などがある。また、任意事業には、福祉ホームの運営、訪問入浴サービス、日中一時支援などの日常生活支援、社会参加支援、就業・就労支援などがある。
 都道府県地域生活支援の必須事業には、専門性の高い相談支援(発達障碍者支援センター運営、障害者就業・生活支援センターなど)、手話通訳者など専門性の高い意思疎通を行う者の養成研修、その派遣、派遣に係る市町村相互間の連絡調整、広域的な支援がある。任意事業にはサービス・相談支援・指導者育成があり、この中には、障害福祉サービス事業所に配置が必要なサービス管理責任者の研修などが含まれている。
 財源は、国がサービス費、自立支援医療費、補装具費などの50%を負担し、都道府県、市町村が25%ずつ負担することになる。地域生活支援事業については国が50%以内、都道府県が50%以内で補助することが出来る。
 障害福祉サービスの利用を希望する場合、原則として市町村による支給決定が必要である。利用に係る費用は市町村より9割相当が支給され、利用者は1割を負担する。負担額には定率負担・所得に応じて上限があり、市町村民税非課税の利用者は無料である。
 障害者総合支援法は、利用者の多様性やニーズの変化への対応、障害者差別解消法、障害者の権利に関する条約の影響、そしてサービスの透明性や質の向上を図ることから、3年ごとに見直し改正されることとなっている。

 以上の概要を述べ筆者は、この法律の意義は、障害のある人が自ら望む場所に居住し、自立した生活を送るために必要な支援を提供すること、社会参加や自己決定の機会が確保されることであると認識するものである。そしてそれは、障害の有無に関係なく地域社会で生きることそのものであると言えるであろう。

おわりに

 計画相談支援に従事する相談支援専門員が不足している。筆者の暮らす自治体も同様で、利用者のニーズに対応することが困難な状況にある。次年度、筆者は相談支援従事者研修を受講する予定であるが、研修制度を含め、抜本的な対策と解決が急務であると考える。

[参考文献]

・宮﨑まさ江、福津律(編)『精神保健福祉制度論』弘文堂 2023年
・デイリー法学選書編修委員会(編)『障害者総合支援法のしくみ』三省堂 2019年

障害者総合支援法のしくみ

・厚生労働省."第13回 地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会 参考資料1". 2022年6月9日 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000940708.pdf. (2023年9月27日閲覧)
・厚生労働省."障害者白書". 令和5年版障害者白書.2023年6月 https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r05hakusho/zenbun/index-pdf.html.(2023年10月1日閲覧)

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