2024年3月19日火曜日

不登校の諸問題(沖縄)

 不登校の諸問題について筆者が居住する沖縄県を中心に述べてみたい。というのも、沖縄は不登校の原因と課題を、学校、家庭のみならず社会全体に抱えていると思われるからである。

・沖縄の現状

 2022年10月、沖縄県内の複数のメディアが「小中学校の不登校過去最多4435人」1)と報じた。報道には2018年から21年度までの不登校者数、いじめ件数の推移が付されており、いずれも沖縄県は全国平均を上回っていた。また小学校の千人あたりの不登校者数は全国で最も多くなっている。

 2023年2月の琉球新報の記事によると、21年度の那覇市内の不登校者数は「小学校421人、中学561人」2)となっている。県全体4435人に対する割合は22%であり、これは沖縄県全体に対する那覇市の人口比率とほぼ同じであることから、不登校者数が中心都市に偏っていないことが判る。また同記事には『心理的、身体的、社会的要因などで30日以上欠席した児童生徒から、理由が「病気」「新型コロナウイルス感染回避」などを除いた』2)とあり、これは不登校について文部科学省による調査の定義と同じ内容であり正確な数値と言える。

・原因と課題

 不登校の原因は様々あるだろうが、先ず「家庭の状況」を挙げてみたい。平成27年度の県教育庁の調査によると、不登校の理由として小学校では「家庭に係る状況」が最も高い値となっているからである。家庭の状況と言っても様々であろうが、沖縄の県民所得は年241万円で全国最低水準にあり、子供の貧困率は29.9%と全国平均の2倍以上である。一人親世帯も多く、貧困が不登校の要因となっていることは容易に想像が出来る。

 これに関連して、2023年4月14日の琉球新報に『ヤングケアラーと思われる小中高生、7450人と推定 沖縄県が調査、2450人は学業・生活に影響、支援急務』3)が掲載された。衝撃的な数値であり、この人数はそのまま不登校の予備軍であるとも言える。子供の貧困同様、問題の根本的な解決に結びつく対策が急務である。

 では次に、いじめについて見てみる。文部科学省の通知によると、いじめによる小・中学校の不登校児童生徒数は「約24万5千人」5)である。いじめが不登校の要因となっていることは明らかであり、2019年度の沖縄のいじめ件数は、1,000人当たりの認知件数、全国平均46.5に対し沖縄は69.5とかなり高い値となっていた。いじめによる不登校者は相当数いるとみて間違いないだろう。

 いじめに対応するにせよ、予防するにせよ、そこに欠かせないのが教職員の存在である。ところが、沖縄の教職員の「精神疾患による病休者は21年度199人で、過去10年間で最多、在職者数に占める割合は全国で最も高い1.29%」4)であり、2022年12月の県議会では県内の教員96人不足していることが報告されている。同年9月26日の琉球新報には心療内科に通院しながら勤務する教員の「スクールカウンセラーは非常勤で、子どもの相談時間もあまり取れない。自分のことを相談できるわけがない」という声が紹介されている。スクールカウンセラーの勤務日数を増やすことは早急に検討されるべき事項であると考えられる。また23年度より、沖縄県は教職員の精神疾患の原因調査、相談体制の強化に乗り出した。いじめといじめによる不登校を無くすためにもその成果に期待したい。

・終わりに

 筆者は沖縄県の生活・就職支援事業に従事しているが、相談者の中には不登校からひきこもりとなり就労困難となっているケースもある。不登校自体は問題行動ではない。社会との接点がなくなることが問題なのである。将来ひきこもりとなることを防ぐためには、フリースクールの活用など、他の選択肢の充実とその周知が、今後益々必要となってくるであろう。

[引用文献]

1)沖縄タイムス 『小中学校の不登校 過去最多4435人 沖縄 前年度より772人増 増加した要因とは』 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1048013(2022年10月28日)記事及び表
2)琉球新報 『那覇市立の小中学校、不登校1000人超 2021年度上回る 病気など「長期欠席」386人』https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1664318.html (2023年2月17日)
3)琉球新報 『ヤングケアラーと思われる小中高生、7450人と推定 沖縄県が調査、2450人は学業・生活に影響、支援急務』https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1694473.html(2023年4月14日)
4)琉球新報 『沖縄の教員、精神疾患での休職が199人 過去10年で最多、割合は全国ワースト』 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1588702.html(2022年9月26日)
5)文部科学省 『令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(通知)』https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00003.htm(2022年10月27日)

[参考文献]

・一般社団法人日本ソーシャルワーク教育学校連盟(編)『現代の精神保健の課題と支援』中央法規出版 2021年

現代の精神保健の課題と支援
・沖縄県教育庁義務教育課(編)『不登校児童生徒への支援の手引き』沖縄県教育庁義務教育課 2020年3月
・内閣府:人材育成に係る沖縄振興審議会専門委員会合配布資料『小中高の現状、課題』沖縄県教育庁 2017年3月15日 https://www8.cao.go.jp/okinawa/siryou/singikai/senmoniinkaigou/1j/01j-041.pdf
・内閣府:沖縄の子供の貧困対策に向けた取組 資料『子供の貧困に関する指標(沖縄県の状況)』内閣府 https://www8.cao.go.jp/okinawa/3/kodomo-hinkon/shiryou/kodomo-genjou5.pdf
・文部科学省初等中等教育局児童生徒課発行『不登校への対応について』文部科学省初等中等教育局児童生徒課 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/futoukou/main.htm 2003年6月
・琉球新報 『沖縄の教員、精神疾患での休職が199人 過去10年で最多、割合は全国ワースト』 https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1588702.html (2022年9月26日)